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山形地方裁判所 昭和53年(ワ)112号 判決 1982年12月07日

原告

飯野正明

ほか三名

被告

山崎英夫

ほか一名

主文

1  被告山崎英夫は原告飯野正明に対し五、一九六、二五七円、原告飯野勝子に対し二、六三〇、四〇〇円、原告飯野宏治に対し三、五九一、二〇〇円、原告飯野寛司に対し一一八、〇〇〇円並びに右各金員に対する昭和五一年五月三一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告らの被告山崎英夫に対するその他の請求及び被告鈴木昭吉に対する請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は原告らと被告鈴木昭吉との間においては全部原告らの負担とし、原告らと被告山崎英夫との間においては被告山崎英夫に生じた費用の三分の一を原告らの負担とし、その他を各自の負担とする。

4  この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  原告ら

(一)  被告山崎英夫(以下「被告山崎」という。)は原告飯野正明(以下「原告正明」という。)に対し一二、三九〇、〇〇〇円、原告飯野勝子(以下「原告勝子」という。)に対し二、九五二、〇〇〇円、原告飯野宏治(以下「原告宏治」という。)に対し一九、四八二、〇〇〇円、原告飯野寛司(以下「原告寛司」という。)に対し五一八、〇〇〇円並びに右各金員に対する昭和五一年五月三一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  被告鈴木昭吉(以下「被告鈴木」という。)は原告正明に対し二、〇〇〇、〇〇〇円、原告勝子に対し八〇〇、〇〇〇円、原告宏治に対し二、〇〇〇、〇〇〇円、原告寛司に対し二〇〇、〇〇〇円並びに右各金員に対する昭和五五年二月二〇日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

(三)  訴訟費用は被告らの負担とする。

(四)  仮執行の宣言

2  被告山崎

(一)  原告らの請求をいずれも棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

(三)  仮執行宣言を付されたときは担保を条件とする仮執行逸脱の宣言

3  被告鈴木

(一)  原告らの請求をいずれも棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

二  当事者の主張

1  原告らの請求の原因

(一)  原告正明は昭和五一年五月三〇日午後九時五分頃普通貨物自動車(山形四ふ三五〇号、以下「被害車」という。)を運転して山形県西村山郡西川町大字睦合丙一五八番地付近の道路を間沢方面から白岩方面に向けて進行中、対向して進行して来た被告山崎運転の普通乗用自動車(山形五五ち四九二号、以下「山崎車」という。)に正面衝突され、その直後被害車の後方を追従して進行して来た被告鈴木運転の普通乗用自動車(山形五五ひ二〇九二号、以下「鈴木車」という。)に後方から衝突される事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(二)  本件事故によつて被害車を運転していた原告正明は全身打撲傷、外傷性頸部症候群、頸背腰部挫傷の、被害車に同乗していた原告勝子は全身打撲傷、外傷性頸部症候群の、原告宏治は頭部打撲傷、下顎左側乳犬歯部骨体骨折、歯根膜炎の、原告寛司は頭部打撲傷の各傷害を受けた。そして、原告正明は右傷害により昭和五一年五月三〇日から同年一一月五日までの一六〇日間医療法人小松医院に入院し、同月五日から同年一二月一四日までの四〇日間山形市立病院済生館に入院し、その後昭和五二年一〇月二五日までの間同病院に通院(通院実日数二〇日)して治療を受けた。原告勝子は前記傷害により昭和五一年五月三〇日から同年九月二五日までの一一九日間前記小松医院に入院し、その後昭和五三年二月二八日までの間同医院に通院(通院実日数九五日)して治療を受けた。原告宏治は前記傷害により昭和五一年五月三〇日前記小松医院に入院し、同月三一日から同年七月五日までの三六日間前記済生館病院に入院し、その後同年九月二四日までの間同病院に通院(通院実日数五日)して治療を受けた。原告寛司は前記傷害により昭和五一年五月三〇日から同年六月五日までの七日間前記小松医院に入院して治療を受けた。

(三)  被告山崎は山崎車を運転して本件事故現場のある道路を時速四五ないし五〇キロメートルで進行していたが、自動車運転者としては、絶えず前方左右を注視して進路の安全を確認して進行するとともにアクセル、ブレーキペダル等を的確に操作して事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、進路右側の人家の方を脇見しながら漫然前記速度で進行し、山崎車が道路中央線を越えて対向車線に進出しはじめてこれに気付き、あわてて急制動しようとしたが、誤つてアクセルペダルを踏んで加速した過失により対向車線を対向進行して来た被害車に山崎車を正面衝突させる本件事故を惹起した。

(四)  被告鈴木は鈴木車を所有し、本件事故当時鈴木車を自己のために運行の用に供していたものである。

(五)  本件事故によつて原告正明の受けた損害は次のとおり合計一二、三九〇、〇〇〇円である。

(1) 入院雑費 一三九、〇〇〇円

入院日数一九九日、一日当り七〇〇円とする。但し、一、〇〇〇円未満を切捨てる。

(2) 入院付添費 六〇、〇〇〇円

入院日数一九九日のうち三〇日間に限り一日当り二、〇〇〇円とする。

(3) 後遺障害による逸失利益 六、〇九一、〇〇〇円

原告正明は昭和一六年七月一七日生れの男子であるが、昭和五二年一〇月二五日頃症状固定した後遺障害として頸、背、胸、腰部に疼痛、両上下肢に疼痛及びしびれ感があり、この障害は後遺障害別等級表第一二級第一二号の局部に頑固な神経症状を残すものに該当し、その障害による労働能力喪失率は一四パーセントである。原告正明の昭和五二年中の年間給与額は二、三六一、八九七円であり、就労可能年数を六七歳までの三一年としてホフマン式計算方法によつて原告正明の逸失利益の現価を計算すれば、

2,361,897×0.14×18.421=6,091,190

となる。そこで一、〇〇〇円未満を切捨てると、原告正明の後遺障害による逸失利益は六、〇九一、〇〇〇円となる。

(4) 慰謝料 三、六〇〇、〇〇〇円

本件事故の態様、原告らの家族構成、入、通院の日数、後遺障害の内容、本件事故後の被告らの態度等の事情を斟酌すれば三、六〇〇、〇〇〇円が相当である。

(5) 弁護士費用 二、五〇〇、〇〇〇円

原告正明は本件訴訟を追行するについて原告ら四名を代表して原告ら訴訟代理人弁護士に対し報酬支払義務を負担した。本件事案に徴すれば弁護士費用二、五〇〇、〇〇〇円が本件事故と相当因果関係にある損害というべきである。

(六) 本件事故によつて原告勝子の受けた損害は次のとおり合計二、九五二、〇〇〇円である。

(1)  入院雑費 八三、〇〇〇円

入院日数一一九日、一日当り七〇〇円とする。但し、一、〇〇〇円未満を切捨てる。

(2)  入院付添費 六〇、〇〇〇円

入院日数一一九日のうち三〇日間に限り一日当り二、〇〇〇円とする。

(3)  休業損害 八〇九、〇〇〇円

原告勝子は前記のとおり本件事故により入院及び通院して治療を受けたので、その入院、通院の実日数二一四日間は家庭の主婦としての家事労働に従事することができなかつた。原告勝子は昭和一八年九月五日生れの女子であつて本件事故当時三二歳であつた。昭和五一年度の女子全労働者の平均給与額は年間一、三七九、九〇〇円である。そこで原告勝子は右二一四日間稼働しえなかつたことにより八〇九、〇三七円の収入を失つたものというべきである。但し、一、〇〇〇円未満を切捨てる。

(4)  慰謝料 二、〇〇〇、〇〇〇円

本件事故の態様、傷害の内容、入、通院期間、本件事故による傷害の家族らに及ぼした影響、本件事故の被告らの態度等の事情を斟酌すれば二、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

(七) 本件事故によつて原告宏治の受けた損害は次のとおり合計一九、四八二、〇〇〇円である。

(1)  入院雑費 二五、〇〇〇円

入院日数三九日、一日当り七〇〇円とする。但し一、〇〇〇円未満を切捨てる。

(2)  入院付添費 七八、〇〇〇円

入院日数三九日、一日当り二、〇〇〇円とする。

(3)  後遺障害による逸失利益 一五、八七九、〇〇〇円

原告宏治は昭和四七年二月三日生れの男子であり、本件事故による傷害により永久歯萠出不全、歯生育不全によりそしやく機能に重大な障害を残す後遺障害がある。この後後遺害は後遺障害別等級表第一〇級第二号のそしやく機能に障害を残すものに該当する。この傷害による労働能力喪失率は二七パーセントである。昭和五三年度の男子全労働者の平均給与額は年額三、〇〇四、七〇〇円であり、原告宏治は一八歳から六七歳までの四九年間就労しうるものとしてホフマン式計算方法によつて逸失利益の現価を計算すれば、

3,004,700×0.27×19.574=15,879,779

となる。そこで一、〇〇〇円未満を切捨てると、原告宏治の後遺障害による逸失利益は一五、八七九、〇〇〇円となる。

(4) 慰謝料 三、五〇〇、〇〇〇円

本件事故による傷害、後遺障害の内容、年齢その他の事情を斟酌すれば三、五〇〇、〇〇〇円が相当である。

(八) 本件事故によつて原告寛司の受けた損害は次のとおり合計五一八、〇〇〇円である。

(1)  入院雑費 四、〇〇〇円

入院日数七日、一日当り七〇〇円とする。但し、一、〇〇〇円未満を切捨てる。

(2)  入院付添費 一四、〇〇〇円

入院日数七日、一日当り二、〇〇〇円とする。

(3)  慰謝料 五〇〇、〇〇〇円

本件事故による傷害、両親の長期入、通院をも斟酌すれば五〇〇、〇〇〇円が相当である。

(九) よつて、被告山崎に対し本件事故の加害者としての損害賠償責任に基づいて原告正明は前記(五)の損害一二、三九〇、〇〇〇円、原告勝子は前記(六)の損害二、九五二、〇〇〇円、原告宏治は前記(七)の損害一九、四八二、〇〇〇円、原告寛司は前記(八)の損害五一八、〇〇〇円並びに右各金員に対する本件事故の日の翌日である昭和五一年五月三一日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告鈴木に対し鈴木車の運行供用者としての損害賠償責任に基づいて原告正明は前記(五)の損害一二、三九〇、〇〇〇円のうち二、〇〇〇、〇〇〇円、原告勝子は前記(六)の損害二、九五二、〇〇〇円のうち八〇〇、〇〇〇円、原告宏治は前記(七)の損害一九、四八二、〇〇〇円のうち二、〇〇〇、〇〇〇円、原告寛司は前記(八)の損害五一八、〇〇〇円のうち二〇〇、〇〇〇円並びに右各うち金員に対する本件事故の日の後である昭和五五年二月二〇日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求の原因に対する被告山崎の答弁

(一)  請求の原因(一)の事実は認める。

(二)  同(二)の事実のうち本件事故によつて原告らが各傷害を受けたこと、右各傷害により原告正明、原告勝子及び原告宏治が入院、通院し、原告寛司が入院したことは認める。

(三)  同(三)の事実のうち被告山崎が山崎車を運転して本件事故現場のある道路を進行していたこと及び被害車と山崎車とが正面衝突したことは認めその他の事実は否認する。

(四)  同(四)の事実について(答弁がない。)

(五)  同(五)の主張は争う。同(五)(1)及び(2)の各事実は知らない。同(五)(3)ないし(5)の各事実は否認する。

(六)  同(六)の主張は争う。同(六)(1)の事実は知らない。同(六)(2)ないし(4)の各事実は否認する。

(七)  同(七)の主張は争う。同(七)(1)及び(2)の各事実は知らない。同(七)(3)及び(4)の各事実は否認する。

(八)  同(八)の主張は争う。同(八)(1)の事実は知らない。同(八)(2)及び(3)の各事実は否認する。

(九)  同(九)の主張は争う。

3  請求の原因に対する被告鈴木の答弁

(一)  請求の原因(一)の事実は認める。

(二)  同(二)の事実は知らない。

(三)  同(三)の事実は認める。

(四)  同(四)の事実のうち被告鈴木が鈴木車を所有していたことは認め、その他の事実は否認する。

(五)  同(五)の事実は知らない。

(六)  同(六)の事実は知らない。

(七)  同(七)の事実は知らない。

(八)  同(八)の事実は知らない。

(九)  同(九)の主張は争う。

4  被告山崎の抗弁

(一)  被告山崎は昭和五一年五月三一日原告正明に対し損害賠償金として一〇、〇〇〇円を支払つた。

(二)  被告山崎は昭和五一年六月二〇日原告宏治に対し損害賠償金として五、〇〇〇円を支払つた。

5  被告山崎の抗弁に対する原告らの答弁

抗弁事実を全て認める。

6  被告鈴木の抗弁

(一)  被告鈴木が鈴木車の運行供用者であるとしても、本件事故に関して被告鈴木には次のとおり自動車損害賠償保障法第三条但書所定の免責事由が存在する。

(1) 被告鈴木は鈴木車を運転して本件事故現場のある道路を先行する被害車から適正な車間距離を保持しつつ時速約四〇キロメートルで被害車に追従して進行していたところ、先行する被害車がストツプランプをつけて減速したので、自車のブレーキを軽く踏み、減速しつつ被害車との車間距離をつめたところ、被害車と対向進行して来た被告山崎の運転する山崎車が速度違反し、かつセンターラインを越えて被害車の走行車線に進入して被害車と正面衝突し、その衝撃により被害車が約五メートル程後方におしもどされ、そのために被害車後部に鈴木車前部が衝突したものである。したがつて被告鈴木は、被害車が右のとおり五メートルも後退することを予見することは不可能であつたから、本件事故について被告鈴木には過失がなかつた。そして本件事故は右のとおり被告山崎の速度違反、センターラインオーバーの過失によるものである。

(2) 本件事故当時鈴木車には構造上の欠陥又は機能の障害はなかつた。

(二)  原告らが本件事故によつて各受傷したとしても、その受傷は被害車に山崎車が正面衝突したことによつて生じたものである。仮りに鈴木車が被害車に衝突したことによつて原告らが各受傷したとしても、被告鈴木の本件事故による責任は、原告らの各受傷と鈴木車の被害車に対する衝突との間に相当因果関係が証明された限度にとどまるべきである。

(三)  原告らは遅くとも昭和五一年一一月二七日までに本件事故による損害及び加害者を知つたものである。したがつて原告らの被告鈴木に対する本件事故に基づく損害賠償債権は昭和五一年一一月二七日から三年の経過をもつて時効によつて消滅した。被告鈴木は本訴において右時効を援用した。

7  被告鈴木の抗弁に対する原告らの答弁

(一)  抗弁(一)の事実のうち被害者と対向進行してきた被告山崎の運転する山崎車が速度違反をし、かつセンターラインを越えて被害車の走行車線に進入して被害車と正面衝突したこと及び本件事故について被告山崎に過失があることは認めるが、その他の事実は否認する。

(二)  同(二)の事実は否認する。原告らの各受傷と鈴木車の被害車に対する衝突との相当因果関係の不存在の立証責任は被告鈴木にあるというべきである。

(三)  同(三)の事実は否認する。

8  被告鈴木に対する原告らの再抗弁

被告鈴木は昭和五二年四月二〇日原告らに対し原告らに対する本件事故による損害賠償債務を承認した。原告らは同日から三年以内である昭和五五年二月一六日被告鈴木に対して本件事故による損害賠償を求める本訴を提起した。

9  再抗弁に対する被告鈴木の答弁

再抗弁事実を否認する。

三  証拠〔略〕

理由

一  請求の原因(一)の事実は原告らと被告両名との間において争いがない。

二  そこで先ず原告らの被告鈴木に対する請求について検討するに、成立について争いのない甲第二号証の一の一、二、第二号証の二ないし三四並びに原告正明及び原告勝子各本人尋問の結果によれば、本件事故によつて被害車を運転していた原告正明並びに被害車に同乗していた原告勝子、原告宏治及び原告寛司がそれぞれ傷害を受けたことが認められ、この認定を妨げる証拠はない。

三1  前記一判示の鈴木車が被告鈴木の所有に属するものであることは、原告らと被告鈴木との間において争いがない。

2  前顕甲第二号証の七ないし一二、二五ないし二八、被告鈴木本人尋問の結果及び前記1及び一確定事実を総合すれば、被告鈴木は本件事故当時鈴木車を自己のために運行の用に供していたことが認められ、この認定を妨げる証拠はない。

3  そうすると鈴木車の運行供用者である被告鈴木は、鈴木車の運行による本件事故によつて傷害を受けた原告らに対し自動車損害賠償保障法第三条本文によつて損害賠償責任を負担することになるところ、被告鈴木は同法第三条但書所定の免責事由が存在する旨主張するので、この主張について検討する。

4  請求の原因(三)の事実は原告らと被告鈴木との間において争いがない。そして被害車と対向進行してきた被告山崎運転の山崎車が速度違反をし、かつセンターラインを越えて被告車の走行車線に進入して被害車と正面衝突したものであつて、本件事故について被告山崎に過失があることは原告らと被告鈴木との間に争いがない。

5  そこで、被告鈴木が鈴木車の運行に関して注意を怠らなかつたか否かについて検討するに、前顕甲第二号証の一の一、二、第二号証の二ないし三四、成立について争いのない同第一八号証の一、原告正明本人尋問の結果によつて本件事故関係車両の写真であることが認められる同第三号証の一ないし四並びに原告正明、原告勝子、被告山崎及び被告鈴木各本人尋問の結果によれば、次の事実が認められ、この認定を妨げる証拠はない。

(一)  本件事故現場のある国道一一二号線道路は全幅員七・九メートル、車道部分の幅員六・六メートルでアスフアルト舗装がされ、道路中央に中央線がひかれてあつた。右道路は本件事故現場付近においては最高速度時速三〇キロメートルの規制がされている。本件事故当時の天候は晴であり、道路面は平坦で乾燥していた。

(二)  被告山崎は山崎車を運転して前記道路を白岩方面から間沢方面に向けて進行し、本件事故現場にさしかかつたものであるが、右道路は本件事故現場の手前において山崎車の進行方向に向けて大きく左曲りのカーブになつていた。被告山崎は山崎車を時速四五ないし五〇キロメートルの速度で走行車線上を進行させてきたところ、被害車と山崎車との衝突地点の約五五メートル手前の地点から約三五メートル手前の地点までの間を進行する間道路右側の知人宅の方を脇見し、右約三五メートル手前の地点において自車が対向車線に進入する危険を感じてハンドルを左に切り減速しようとしたが、誤つてアクセルペダルを踏んだためそのまま対向車線に進入して対向車線上を進行し、前記衝突地点の約一五メートル手前の地点において前方対向車線上を進行して来た原告正明運転の被害車が山崎車を認めて停止しようとしているのを発見して急制動したものの及ばず、そのまま前記衝突地点に停止していた被害車と正面衝突し、その衝撃によつて被害車をその後方に押しもどし、山崎車も右衝突地点から約三・九五メートル前方へ進行して停止した。

(三)  原告正明は被害車を運転して前記道路の走行車線上を間沢方面から白岩方面に向けて時速約三〇ないし四〇キロメートルの速度で進行し、本件事故現場付近にさしかかつたところ、前方約五〇メートルの地点において、対向して進行して来た被告山崎運転の山崎車が自車の走行車線に進入して来る気配を感じて自車のブレーキを軽く踏みつつ約八・五メートル進行し、そこで山崎車が自車の走行車上を対向して進行して来るのを約二九メートル先に認めて急制動をし、約二・八メートル進行して走行車線上の左寄りの位置に停止した。被害車が右停止すると間もなく、対向して進行して来た山崎車の前部が前記のとおり被害車の前部と正面衝突したため、その衝撃によつて被害車は約六メートル後方へ押し戻されたところ、同地点において被害車に追従して進行して来た被告鈴木運転の鈴木車の前部が被害車の後部に衝突し、ほぼその地点において右両車両は接触したままの状態で停止した。

(四)  被告鈴木は鈴木車を運転して前記道路の走行車線上を、先行する被害車の直後を同車に追従して時速約三〇ないし四〇キロメートルの速度で進行し、本件事故現場付近にさしかかつたところ、前方約七八メートルの地点に対向して進行して来る被告山崎運転の山崎車を認めたが、そのとき先行する被害車と鈴木車との車間距離は約七・九メートルであつた。被告鈴木はその頃対向する山崎車がセンターラインを越えている気配を感じたが、約八・一メートル前を先行する被害車の蔭になつていたのではつきり認識することができず、被害車が軽く制動したことをブレーキランプによつて知り自車を軽く制動してやや減速させた。それから鈴木車が約五・八メートル進行した地点において、被告鈴木は自車の約六・二メートル前方を先行する被害車が急制動したのを認めて追突の危険を感じ、鈴木車を急制動してハンドルを左に切つたが、その直後に前記のとおり被害車が山崎車と正面衝突し、その衝撃によつて被害車は後方に押しもどされて来た。そして、被害車が山崎車との衝突地点から約六メートル後退してきたところにおいて、この後退する被害車の後部に鈴木車の前部が衝突し、被害車及び鈴木車はその場に停止した。

6  ところで同一進路上の先行車両の直後に追従して進行する車両はその先行車両が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な車間距離を先行車両から保たなければならないとされており(道路交通法第二六条)、右先行車両が急に停止したときとはその車両が制動機の制動力の作用によつて停止した場合のみならず、それ以外の作用によつて異常な停止をした場合をも含むものと解すべきである。したがつて前記5認定事実によれば、先行する被害車の直後を追従していた鈴木車は時速約三〇ないし四〇キロメートルの速度で進行していたのであるから、鈴木車の運転者が危険を察知してブレーキを操作し同車が完全に停止するまでの制動停止距離は前記5判示の事情のもとでは時速三〇キロメートルの場合は一〇・四六メートルないし一二・九六メートル、時速四〇キロメートルの場合は一六・〇二メートルないし一九・三五メートルと考えられるので、被告鈴木が先行する被害車との追突事故を避けるためには被害車と鈴木車との間に少くとも一〇・四六メートルの車間距離を保持していなければならないものというべきである。しかるに被告鈴木は前記5認定事実によれば本件事故の直前の時点において先行する被害車から六・二メートルないし八・一メートルの車間距離をとつて鈴木車を進行させていたことが認められるから、被告鈴木は鈴木車の運転者として道路交通法第二六条に違反していたものというべきである。しかしながら本件事故においては前記5判示のとおり鈴木車に先行する被害車が山崎車と正面衝突してその衝撃により急に約六メートル後退したところへ鈴木車が追突したものであつて、このような場合にはたとえ被告鈴木が道路交通法第二六条所定の車間距離を保持していたとしても鈴木車の被害車への追突は避けられないことがありえたのであるから、被告鈴木が前記のとおり道路交通法第二六条に違反し先行する被害車との間に必要な車間距離を保持していなかつた過失は、被害車に対する鈴木車の追突という本件事故の発生とは相当因果関係がないものというべきである。また、前記5認定事実によれば、前記道路は本件事故現場付近において最高速度時速三〇キロメートルの規制がされているところ、これに違反して被告鈴木は鈴木車を時速三〇ないし四〇キロメートルの速度で進行させていたが、この速度違反の点も前記5判示の事情のもとでは本件事故の発生と相当因果関係がないものというべきである。

7  したがつて前記4及び5判示事実によれば、本件事故は結局被告山崎が山崎車を運転中において前方注視等の安全確認義務及びアクセル、ブレーキ等を確実に操作する義務に違背した過失によつて発生したものというべきであり、被告鈴木には鈴木車の運転者及び運行供用者として本件事故の発生について過失がなかつたものというべきである。そして前顕甲第二号証の一の一、二、第二号証の二ないし三四及び被告鈴木本人尋問の結果によれば、本件事故当時鈴木車にはブレーキ、ハンドルその他について構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことが認められる。

8  以上判示したところによれば、鈴木車の運行供用者である被告鈴木には本件事故について自動車損害賠償保障法第三条但書所定の免責事由があるものといえる。

四  したがつて、その他の請求の原因事実又は抗弁事実について判断するまでもなく、原告らの被告鈴木に対する本訴請求は理由がないものというべきである。

五  次に原告らの被告山崎に対する請求について検討するに、成立について争いのない甲第二号証の一の一、二、第二号証の二ないし三四、第一八号証の一、原告正明本人尋問の結果によつて本件事故関係車両の写真であることが認められる同第三号証の一ないし四並びに原告正明、原告勝子、被告山崎及び被告鈴木各本人尋問の結果によれば、請求の原因(三)の事実が認められ、この認定を妨げる証拠はない(但し、被告山崎が山崎車を運転して本件事故現場のある道路を進行していたこと及び被害車と山崎車とが正面衝突したことは争いがない。)。

六  前顕甲第二号証の一の一、二、第二号証の二ないし三四、成立について争いがない同第四号証の一ないし一〇、第五号証の一ないし九、第七号証の一ないし四、第一〇ないし第一七号証並びに原告正明及び原告勝子各本人尋問の結果によれば、請求の原因(二)の事実が認められ、この認定を妨げる証拠はない(但し、本件事故によつて原告らが各傷害を受けたこと並びに右各傷害により原告正明、原告勝子及び原告宏治が入院、通院し、原告寛司が入院したことは争いがない。)。

七  以上判示したところによれば、被告山崎は本件事故の加害者として本件事故によつて原告らにそれぞれ生じた損害を賠償する義務があるものというべきである。

八  そこで、原告正明の損害について検討する。

1  (入院雑費)

原告正明は本件事故による傷害の治療のために昭和五一年五月三〇日から同年一一月五日まで小松医院に、同月五日から同年一二月一四日まで済生館病院に入院したことは前記六に判示したとおりであり、その入院日数の合計は一九九日であり、その入院中の雑費として入院一日当り六〇〇円を要したものと認めるのが相当であるから、合計一一九、四〇〇円が入院雑費として原告正明の損害というべきである。

2  (入院付添費)

成立について争いのない甲第四号証の一及び前記六判示事実によれば、原告正明は小松医院に入院中の昭和五一年五月三〇日から同年六月一二日までの一四日間は疼痛著しく歩行困難のため付添看護を要する状態であつたことが認められる。そこでこの付添看護料は一日当り二、〇〇〇円とするのが相当であるから一四日間分の合計二八、〇〇〇円が入院付添費として原告正明の損害というべきである。

3  (後遺障害による逸失利益)

(一)  成立について争いがない甲第二号証の一五、一六、二一、三〇、三一、三三、第四号証の一ないし一〇、第一〇ないし第一三号証、証人久保田正博の証言及び原告正明本人尋問の結果によれば、原告正明は昭和一六年七月一七日生れの男子であるところ、前記六のとおり昭和五一年一二月一四日まで入院治療を受け、その後昭和五二年一〇月二五日までの間に合計二〇日間済生館病院に通院して治療を受けたこと、そして原告正明は右治療が終了した時点において症状固定した後遺障害が残つたこと、この後遺障害は頸、背、胸、腰部及び両上下肢に疼痛としびれ感のあるものであり、X線検査結果によれば椎間板に変性が認められるが、年齢的な原因によることも考えられ、またミイログラフイー検査及び髄液検査によつても異常が認められない状態であること、原告正明は山形交通整備株式会社に勤務する整備士として自動車の整備業務を行つているものであるが、前記後遺障害による苦痛によつて症状固定時においては軽作業程度の仕事しかできなかつたが、徐々に訓練することによつて昭和五六年三月頃の時点においては腰痛があるものの特別な重労働を除けば通常のとおり稼働しうる状態であることが認められる。

(二)  前記(一)認定事実によれば、原告正明の前記後遺障害による労働能力喪失割合を一〇パーセントとし、その喪失期間を昭和五七年一二月末までと認めるのが相当である。

(三)  成立について争いのない甲第二号証の三一、弁論の全趣旨によつて成立の認められる同第六号証の一、二によれば、原告正明の本件事故当時の年間給与額は少くとも二、一六〇、〇〇〇円であつたこと、原告正明は治療等のため昭和五一年一二月一九日まで欠勤し、翌二〇日から勤務に復帰したことが認められる。これによれば原告正明は年間給与額二、一六〇、〇〇〇円の一〇パーセントである二一六、〇〇〇円の収入を昭和五一年一二月から昭和五七年一二月まで毎年喪失したものというべきであるから、右喪失額の本件事故時における現価をホフマン式計算法に従い年毎に民事法定利率年五分の割合による中間利息を控除して算出すれば、

216,000×5.1336=1,108,857

として一、一〇八、八五七円となる。

(四)  したがつて原告正明の後遺障害による逸失利益は一、一〇八、八五七円ということができる。

4  (慰謝料)

本件事故の原因、態様、原告正明の傷害の部位、程度、治療の経過、後遺障害の内容、程度その他諸般の事情を考え合わせると原告正明の本件事故による慰謝料は二、九〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

5  (一部弁済)

前記1ないし4の損害の合計額は四、一五六、二五七円であるところ、被告山崎が昭和五一年五月三一日原告正明に対し一〇、〇〇〇円を支払つたことは原告らと被告山崎との間において争いがないので、右一〇、〇〇〇円を右四、一五六、二五七円から控除すれば残額は四、一四六、二五七円となる。

九  次に、原告勝子の損害について検討する。

1  (入院雑費)

原告勝子が本件事故による傷害の治療のために昭和五一年五月三〇日から同年九月二五日までの一一九日間小松医院に入院したことは前記六に判示したとおりであり、その入院中の雑費として入院一日当り六〇〇円を要したものと認めるのが相当であるから、合計七一、四〇〇円が入院雑費として原告勝子の損害というべきである。

2  (入院付添費)

原告勝子が昭和五一年五月三〇日から同年九月二五日まで入院治療を受けたことは前記1のとおりであるが、その入院中原告勝子が付添看護を要する状態であつたことは本件全証拠によるもこれを認めることができない。したがつて原告勝子は本件事故による損害賠償として入院付添費の支払を求めることはできないものといわざるをえない。

3  (休業損害)

原告勝子本人尋問の結果によれば、原告勝子は昭和一八年九月五日生れであり、原告正明の妻として家事に従事する主婦であることが認められ、原告勝子は本件事故による傷害により前記六のとおり一一九日間入院し、その後昭和五三年二月二八日までの間に九五日間通院して治療を受けたものであるから、その入院、通院の実日数二一四日間は家庭の主婦としての家事労働に従事することができなかつたものと認められる。そして昭和五一年度の賃金センサスによれば産業計、企業規模計、学歴計による女子全労働者の平均給与は年額一、三七九、九〇〇円であるから、原告勝子が右二一四日間家事労働に従事することができなかつたことによる損害は少くとも原告勝子主張の八〇九、〇〇〇円と認めるのが相当である。

4  (慰謝料)

本件事故の原因、態様、原告勝子の傷害の部位、程度、治療の経過その他諸般の事情を考え合わせると原告勝子の本件事故による慰謝料は一、七五〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

一〇  原告宏治の損害について検討する。

1  (入院雑費)

原告宏治が本件事故による傷害の治療のために昭和五一年五月三〇日小松医院に入院し、同月三一日から同年七月五日まで済生館病院に入院したことは前記六に判示したとおりであり、その入院日数の合計は三七日であり、その入院中の雑費として入院一日当り六〇〇円を要したものと認めるのが相当であるから、合計二二、二〇〇円が入院雑費として原告宏治の損害というべきである。

2  (入院付添費)

原告宏治が昭和五一年五月三〇日から同年七月五日まで三七日間入院治療を受けたこと前記六判示のとおりであり、成立について争いのない甲第五号証の五、証人牧野伸一の証言並びに原告正明及び原告勝子各本人尋問の結果によれば、原告宏治は当時四歳の幼児であつたことから右入院中付添看護を要する状態であつたことが認められる。そこでこの付添看護料は一日当り二、〇〇〇円とするのが相当であるから、三七日分の合計七四、〇〇〇円が入院付添費として原告宏治の損害というべきである。

3  (後遺障害による逸失利益)

(一)  成立について争いがない甲第五号証の一ないし九、第一四ないし第一七号証、証人牧野伸一の証言並びに原告正明及び原告勝子各本人尋問の結果によれば、原告宏治は本件事故当時四歳の幼児であつたが、本件事故によつて頭部打撲傷を受けるとともに、下顎左側の乳犬歯部骨体骨折を受けたものであり、小松医院において応急の手当を受けたうえ昭和五一年五月三一日から同年七月五日まで済生館病院に入院して歯科において右乳犬歯部骨体骨折の治療を受けたものであるが、七歳である昭和五四年二月現在において前記下顎左側乳犬歯部骨体骨折のため将来成長しても下顎左側の側切歯及び犬歯は萠出の可能性がなく適当な時期に補綴処置をすること、また下顎前歯部が舌側転位して上顎前歯部との咬合が不全であり、大臼歯部においては半咬頭前方位で咬合しそしやく力が二分の一程度であるが、小臼歯の萠出後正常咬合位にするため矯正治療を必要とする状態であつて、全体として咬合及びそしやく不全の状態にあることが認められる。

(二)  前記認定事実によれば、原告宏治には現在そしやく機能に障害がある状態であるというべきであるが、未だ成長の過程にある者として将来適当な時期に歯部の補綴若しくは矯正の処置がとられることによつてそしやく機能の回復がはかられるものと予想されるうえ、もし仮りにそのそしやく機能に一部不全な点があつたものとしてもそのことのために、原告宏治が就労すべき時である一八歳に達した時点において原告宏治の就労し稼働する能力に欠けるところのあるべきことはこれを認めることができない。

(三)  したがつて原告宏治が後遺障害によつて労働能力を失つたとしてその逸失利益の賠償をすべきであるとの原告宏治の主張は理由がない。

4  (慰謝料)

本件事故の原因、態様、原告宏治の傷害の部位、程度、治療の経過、前記3判示のそしやく機能障害の状況、将来における歯の矯正、補綴等の処置の必要性その他諸般の事情を考え合わせると、原告宏治の本件事故による慰謝料は三、五〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

5  (一部弁済)

被告山崎が昭和五一年六月二〇日原告宏治に対し損害賠償金として五、〇〇〇円を支払つたことは原告らと被告山崎との間において争いがないので、この五、〇〇〇円を前記1、2及び4の損害合計三、五九六、二〇〇円から控除すれば残額三、五九一、二〇〇円となる。

一一  最後に、原告寛司の損害について検討する。

1  (入院雑費)

原告寛司が本件事故による傷害の治療のために昭和五一年五月三〇日から同年六月五日までの七日間小松医院に入院したことは前記六に判示したとおりであり、右入院中の雑費として入院一日当り六〇〇円を要したものと認めるのが相当であるから、少くとも原告主張の四、〇〇〇円が入院雑費として原告寛司の損害というべきである。

2  (入院付添費)

原告寛司が昭和五一年五月三〇日から同年六月五日までの七日間入院治療を受けたこと前記六に判示したとおりであり、成立について争いのない甲第一号証並びに原告正明及び原告勝子各本人尋問の結果によれば、原告寛司は右入院当時二歳の幼児であつて入院中付添看護を要する状態であつたことが認められる。そこでこの付添看護料は一日当り二、〇〇〇円とするのが相当であるから、七日分の合計一四、〇〇〇円が入院付添費として原告寛司の損害というべきである。

3  (慰謝料)

本件事故の原因、態様、原告寛司の傷害の部位、程度、治療の経過その他諸般の事情を考え合わせると、原告寛司の本件事故による慰謝料は一〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

一二  原告らが弁護士に対し本件事故による損害賠償請求の本訴提起及びその追行を委任したことは当裁判所に顕著であり、弁論の全趣旨によれば原告正明は自己のため並びに原告勝子、原告宏治及び原告寛司のために右弁護士に対し報酬の支払を約束したことが推認される。そして本件事件の難易、請求額、認容額など諸般の事情を斟酌すれば、一、〇五〇、〇〇〇円をもつて本件事故と相当因果関係にある原告正明の損害と認めるのが相当である。

一三  以上判示したところによれば、被告山崎は本件事故の加害者としての損害賠償責任に基づいて原告正明に対し前記八5及び一二の損害合計五、一九六、二五七円、原告勝子に対し前記九1、3及び4の損害合計二、六三〇、四〇〇円、原告宏治に対し前記一〇5の損害三、五九一、二〇〇円、原告寛司に対し前記一一1ないし3の損害合計一一八、〇〇〇円並びに右各金員に対する本件事故の日の翌日である昭和五一年五月三一日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をする義務があるものというべきである。

一四  したがつて、原告らの被告山崎に対する本訴請求は前記一三判示の金員の支払を求める限度でそれぞれ正当であるから認容し、その他は失当であるからいずれも棄却し、原告らの被告鈴木に対する本訴請求はいずれも失当であるから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条第一項本文を、仮執行の宣言について同法第一九六条をそれぞれ適用し、被告山崎の仮執行免脱の宣言の申立については相当でないから却下することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 下澤悦夫)

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